【真実の】Skyrim【在り処】
【真実の】Skyrim【在り処】
【真実の】Skyrim【在り処】
吐く息は白く、浅く、速い。

いつもの革のグローブの上から細い毛皮の紐を幾重にも巻きつけ、膨張しきった指で凍るような岩肌を這うようにして進む。

中天に差し掛かった月明かりの照らす古代遺跡の廃墟には、数百メートル離れたここからでも幾つものかがり火が見える。

「・・・朝までには片付きそうだ、な」

勝手に垂れてくる鼻水を啜り上げ、小さく呟く・・・この面倒な依頼もこれで完了だと思うと嬉しいような寂しいような複雑な感情が生じる。

「ま、半分以上は俺の趣味なんだから、な」

俺は古代遺跡の現在の住人たるリーチの原住民に気取られないよう、細心の注意を払いながら急峻な斜面を少しずつ降りていった。


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「やぁ!我が博物館にようこそ!・・・ここには第三期終焉の立役者とも言える伝説のカルトに関する様々な資料が揃っている」

赤い派手なローブに身を包んだ男に突然声を掛けられた俺は、思わず眉間にしわを寄せて男の顔をじっと見つめてしまった。

ドーンスターみたいな田舎に用事があって来ることは滅多に無いが、カジートのキャラバンからムーンシュガーやスクゥーマを仕入れるためにこの町の入り口を訪れるのは数ヶ月に一度くらいだ。

その日もカルジョと少し立ち話をした後、日暮れも近いので宿を取ってから海岸を散歩していた・・・ただ、それだけだった。

赤いローブの男は見つめ返してきた俺の目線をどう受け取ったのか知らぬが、俄然勧誘に力を入れてきた。

「どうぞ中に入ってくれ給え!今ならオープン記念で入館料も無料!そして・・・」

男はちらっと少しだけ周囲に眼をやってから声のトーンを少し下げて言った。

「・・・見たところ優秀な冒険者といった態だ・・・ならば少々頼みたいこともあるし、な」


誓って言うが、俺は宗教とかカルトとかいったものには一切興味が無い。

心から敬愛する神々のためにその身を捧げ、倫理の垣根も踏み倒し、例え破滅の道に至ろうとも歩みを止めぬ・・・などといういささか狂信的な集団に属するなんて考えただけでも怖気が走る。

俺が信じるのは「契約」に基づいたギブアンドテイクの関係だけだ。

まぁ、そういう意味では宗教や信仰の中にもその側面が無いとは言えないな・・・奉仕と加護が表裏一体になる「信ずるに値する相手」となら「契約」してもいい。

もっとも、エイドラもデイドラも俺達のことは虫けら程度の認識なのだろう・・・古来よりその契約が額面どおりに果たされる確率は極めて低いけど、な。


俺が赤いローブの男、サイラス=ヴェスイウスの話を聴く気になったのはどちらかといえば俺の純粋なる好奇心のためだ。

およそ200年前、帝国首都シロディール地方を襲った災厄・・・後に歴史書に「オブリビオンの動乱」と記される内乱は、当時新興カルト集団であった「深遠の暁」が中心になって実行された「皇帝暗殺事件」に端を発しているという。

「歴史は勝者が創る」とは古来よりの常識だが、同時に敗者にも「敗者なりの言い分や道理」があるというのもまた、真理である。

敗れたものの当時の帝国の屋台骨を揺るがし、結果的に現在のアルドメリドミニオンの台頭を許すきっかけとなった内乱を歴史の反対側から垣間見てみたい・・・ふと俺の胸に浮かんだそんな欲求を誰が否定できるというのだ?


サイラスの屋敷・・・いや、まぁ・・・自宅兼博物館は生活臭とカルト教団の遺物を展示したスペースがなんともミスマッチな小屋だった。

彼に案内され、直接解説を聞きながら部屋に設置された4つの展示ケースを順番に見てゆく・・・少々解説がうざったいが、時折興味深いトリビアも織り交ぜた一族の自慢話を聞くともなしに聞きながら、観る。

サイラス館長本人も普段から着用している赤い趣味の悪いローブ(教団の制服だったらしい・・・カルトだってすぐに判っちゃダメじゃね?)、オブリビオンの動乱の際にメエルーンズ・デイゴンの次元とニルン(現世界:タムリエル)とを繋ぐゲートを呼び出したという魔道書(なんと!原書だ!)の一部、「深遠の暁」の側に伝わる伝承書物(これ、盗めないかなァ・・・読みたい・・・)、そして最後の展示ケースには・・・。

「・・・これはかの有名なメエルーンズ・デイゴンの刃”メエルーンズの剃刀”・・・」

サイラスは展示ケースを半ばうっとりするような表情で見つめながら解説を続ける。

「・・・の、鞘だ」

「・・・中身は無いのか?」

サイラスは思わず口をついて出た俺の言葉を待っていたように片方の唇をにぃっとつり上げた。

「ある、確かにタムリエル、いや、現在はスカイリム地方に存在はしている・・・だが・・・」

サイラスが言葉を切ったので、俺は彼の方を向き直って先を促した。

「オブリビオンの動乱が収束した際、メエルーンズ・デイゴンの再臨を恐れた者共の手により致死のアーティファクト・・・すなわち”メエルーンズの剃刀”は砕かれた・・・」

サイラスは慣れた手つきで展示ケースを開けると、メエルーンズの剃刀の鞘をそっと取り上げた。

「鞘は我が一族・・・「深遠の暁」教団の有力者であったヴェスイウス家が聖遺物としてこれを敵の手より奪い返し、代々守り通してきた、が・・・」

「剃刀本体はこれを柄石・柄・刃に分け、決してこれらを再び鍛え直すことが出来ぬようにと三氏族の長に別々に保管させたという・・・」

「ほう・・・じゃあ俺に”頼みたいこと”ってのは・・・」

サイラスは「わが意を得たり」といった表情でにやりと笑った。

「・・・既に三氏族の末裔の住処は調査してある」


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マルカルスを北東に臨む急峻な岩山に囲まれたこの自然要塞に建てられた古代遺跡は、現在ではリーチの原住民であるブレトンの集団・・・フォースウォーンの巨大要塞「ハグロック」と呼ばれている。

その頂上付近の一角は「デッドリークローンロック」と呼ばれ、フォースウォーンに寄生するハグレイヴン共の住処となっている。

俺は・・・個人的にはフォースウォーンの連中が抱く現在のノルド支配に対する怒りには理解がある方だと思っている。

だからなるべく彼らとモメたくない。

ハグロック要塞を入り口から誰にも見つからずに登り切るのは難しいが、岩山を越えて直接山頂付近に侵入すればその危険もかなり回避出来るのではないか?と考えたのだ。

「・・・もう、暫くボルダリングは御免だな・・・」

見張りを一人絞め落とし、縛り上げてテントに放り込む。

かがり火の前で硬直している両手の指をほぐし、防寒着をかがり火の中に脱ぎ捨てていつもの黒っぽい服装に戻ると二度三度と凝り固まった体を動かす・・・そして弓と短剣を確かめると身を屈めて近くの石段を素早く登りはじめた。


古代遺跡の精巧な石造りの水路が縦横に走るこの要塞は、元々は軍事施設ではなく都市だったのではないだろうか?

かつてここにはドゥーマーのような石と金属を主体にした建造物ではなく、木を使った建造物がひしめいていたのかも知れない。

地面に所々穿たれた穴は柱を差込んで楔で留める為のもの・・・そう考えると長い年月や戦による火災などが地表の木造建築部分を一掃してしまい、現在の平坦部と石造りの水路だけを残したのではあるまいか?

月明かりを背に古代に思いを馳せながら石段を上り詰めると、立体的な水路の間を抜ける細い小道が見えた。

そして、その奥には各地で見られる古代ドラゴン語の記されたモニュメントと、祭壇に横たわったフォースウォーン風の人間、そしておぞましいハグレイヴン達が執り行っている怪しげな儀式が眼に入った。


俺は気取られぬように息を殺してハグレイヴン達に接近すると、茂み越しにオリハルコンを心材にした鈍い深緑色のオークの矢を番えた。

ぶんっ!

低い唸りを上げて放たれたオークの矢は、狙いを違わず片方のハグレイヴンを後ろのモニュメントにはりつける。

残る一人が慌てて防護魔法を展開し周囲を警戒しはじめたが、続いて放たれた二の矢はその防護魔法を貫通し、ハグレイヴンはその魔力の青白い残滓を周囲に撒き散らしながら絶命した。

そのとき、視界の端に何か動くものが・・・反射的に祭壇脇の物陰に転がり込むと、祭壇の上に寝かされていたフォースウォーン風の男がゆっくりと起き上がるところだった。

(嫌なものを見てしまった・・な!)

「フォースウォーン・ブライアハート」・・・ハグレイヴン共が怪しげな儀式で創り出した心臓を入れ替えられた死体人形だ!

まだ起き上がったばかりで俺に気付いていないブライアハートは虚ろな眼で何を見ているのだろう?

俺は物陰からそっと背後に忍び寄り・・・あるものを掏り取った。

ゆらっと人影が揺れると、糸が切れた操り人形はそのまま崩れるように足元に倒れた。

俺は右手に握られた棘の生えた心臓を握り潰す・・・なんとも言えぬ嫌な感触がその手に残った。


倒れているハグレイヴンのうちの片方がこの要塞の支配者「ドラスキュア」だったのだろう・・・彼女の懐からは深い藍色の玉石「メエルーンズの柄頭石」が見つかった。

「・・・これで揃った、な」

俺は光沢のある玉石を布切れで厳重に包み、背負い袋ではなく自分の上着の小さなふたつきのポケットに仕舞い込んだ。

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サイラスはこの仕事について一定の報酬を約束していた。

すなわち、三氏族に厳重に保管されているであろう聖遺物の欠片「柄・柄頭石・刃」のそれぞれについて金貨1000枚を支払うというのだ。

だが、俺はそこにもう一つのオプションを要求した。

「あの本を読ませて欲しい」

俺が展示ケースに陳列された「深遠の暁」の伝承書を指差したとき、サイラスはその表情に微妙なものを含んでいた。

「・・・何のために?」

極力落着いている風を装ってはいるが、内心のざわめきが声に出ていた。

「歴史を、本当にあったことを知りたい・・・帝国の、勝者の側の歴史だけではなく敗者の持つ事実をも知りたい」

「敗者」の部分に些か引っかかるところがあったのだろう、サイラスは少し目を眇めた。

数秒間迷うような色が眼に浮かんだが、サイラスは答えた。

「・・・よかろう、展示物故貸し出すことはまかりならぬが閲覧は特別に許可しよう」

「ただし、最初の一冊は今私が見ている前で読むことを許可するが、続巻については聖遺物を一つ入手する度に私の立会いの元でのみ一巻ずつ閲覧を許可するとしよう・・・どうだ?」

俺は「解った、契約成立だ」と軽く首肯した。




今度はもうちょっとだけつづくらしい

コメント

菊の丞
2012年10月17日23:09

囚人の頭巾はやはり・・・怪しさマックスですわwwwwww

reijirou
2012年10月18日0:24

やっぱ皮の鎧と組み合わせたときがカンダタ度が高くてステキですw

たま
2012年10月18日15:14

画像2が酷い、どこしらべるの!><

reijirou
2012年10月18日16:49

お☆ま☆た

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